第48回 マツタケ人工栽培究極の会 令和5年3月4日の記録
令和5年3月4日の、マツタケ人工栽培究極の会は、
KUAS京都先端科学大学、亀岡曽我部キャンパス裏山にて、行われました。
参加者は、金子さん、小松さん、才村さん、関谷先生、高瀬先生、野村、濱崎さん、藤田博美さん、吉原さんの9名でした。
今回は、いつもの右京区の施業地から離れて、亀岡での作業です。
落ち葉や苔の地搔き、太い根の断根をして、赤玉土で埋めました。
地搔きをして、土中の有機物を減らし、
根切り(細根の発根促進)という、地道な作業ですが、
マツタケの収穫が多かったころの、常套手段です。
3月の春めいた陽気の下、結構な発汗で、喉が渇きました。
いつもは、関谷先生と高瀬先生のフィールドですが、
9人がかりで、マツタケが成りそうな山になりました。
先月、
森林総合研究所より、トリュフの人工栽培成功のエポックが、発表されました。
「トリュフ」の人工栽培に国内で初めて成功…(前回の記録)
トリュフは、マツタケと同様、菌根菌で、
コナラの林間栽培に、昨年秋に初めて成功しましたが、
商業ベースに乗るのは、あと10年という予想です。
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――トリュフの人工栽培は、なぜ難しい?
トリュフは、生きた樹木の根に共生して増殖する「菌根菌」と呼ばれる菌類に属しています。
これを踏まえ、理由の1つは、「菌根菌」の場合、菌と樹木の両方の成長を制御する必要がある点です。
もう1つの理由は、様々な微生物が存在する土壌の中で、特定の「菌根菌」のみを優先して生育させるのが、難しい点かと思います。
腐生菌(シイタケ、エノキタケ、ナメコなど、木を腐らせて生育する種類)の場合、菌床栽培では、一旦、全て滅菌して、競合する微生物が存在しない中で育てるので、その種を増殖させることは簡単です。
原木栽培でも、用いる原木の中には、切って乾かした上で菌を接種するので、この場合も競合する菌は少ないです。
一方で、菌と樹木の両方の成長を制御する必要がある「菌根菌」に属するトリュフは、人工栽培が難しいということになります。
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――今回の人工栽培、どのように行った?
根にトリュフ菌を共生させた、コナラの苗木を野外の試験地に植えて、栽培しました。
トリュフは菌根菌と呼ばれる菌類に属しており、人工的にトリュフを発生させるには、樹木との共生関係を明らかにして、それを再現することが重要です。
海外では樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽することで、トリュフの栽培が行われてきています。
そこで、研究グループでは、国内のトリュフの自然発生地で調査を進めて、トリュフの生育に適した樹木の種類や土壌の環境を解明し、それらの条件を再現して、国産のトリュフを発生させることを目指しました。
食材として有望な国産の白トリュフである「ホンセイヨウショウロ」を共生させた「コナラ」の苗木を、国内各地の4つの試験地に植えて、栽培管理を行いました。
その結果、茨城県内の試験地、および、京都府内の試験地で、去年11月に、それぞれ8個および14個のトリュフの発生を確認しました。
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――今回の人工栽培で「コナラ」の苗木を使った理由は?
私(森林総合研究所:山中さん)は元々、「樹木と菌根菌の共生関係」の研究を行っており、その際の研究材料として、コナラが適していました。
トリュフは様々な種に共生しますが、コナラが研究材料として適していたことが理由の1つです。
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――トリュフと樹木を共生させる。これはどういうこと?
トリュフは樹木の根の表面を覆って、「菌根」という構造物を作ります。その菌根を介して、トリュフは樹木が生産した光合成の産物を栄養源として得て、生育します。
一方で、菌根菌は土壌の中を拡がって、樹木の成長に必要な無機養分を効率的に獲得して、樹木に供給します。
つまり、菌根菌が樹木の根に「菌根」を作ることは、お互いの生育に有益なものであり、それを共生するとしています。
この樹木の根にトリュフ菌が菌根を作って存在している状態にさせることを、トリュフを共生させるということです。
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――収穫できる大きさになるまでには、何年ぐらいかかる?
最初に植栽試験をした茨城県では5年1カ月、京都府の植栽試験(2019年4月)では3年7カ月かかりました。
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――人工栽培のトリュフを販売できるようになるのは、いつ頃になりそう?
実用化までには、取り組むべき課題がまだあり、具体的にはいつ頃とは言えないのですが、強いて言えば、10年程度はかかると思います。
価格は検討中ですが、海外産よりも安く提供できればと考えています。
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――販売できるようになるためには、どのようなことが必要?
今回、4か所のうち2か所のみで発生していまして、それを着実に発生させることが必要です。
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――この技術はマツタケなど他の人工栽培にも応用できる?
マツタケはマツに共生する菌根菌ですので、マツタケの栽培化に向けた研究開発には、今回のトリュフに関する知見を活用して、取り組むことになります。
人工栽培のトリュフ、ぜひ一度、味わってみたいが、販売できるようになるまでには10年程度かかるという。
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4年前の4月(平成最後の月)に、
という文章をUPしましたが、トリュフの人工栽培が成功したなら、
マツタケ人工栽培にも、解がありそうな期待が湧きます。
記:野村龍司