「トリュフ」の人工栽培に国内で初めて成功…
海外産と香りは違う?
研究者「正直、想定外のことでした」
以下、FNNプライムNEWSよりすべて引用
世界三大珍味の1つとされる高級食材「トリュフ」。
人工栽培は難しいとされているのだが、国立研究開発法人 森林研究・整備機構「森林総合研究所」が2月9日、トリュフの人工栽培に国内で初めて成功したと発表した。
今回、人工栽培に成功したのは、国産のトリュフである「ホンセイヨウショウロ」だ。
森林総合研究所では、2015年度から国産トリュフの栽培化を目指した研究に取り組んできて、「ホンセイヨウショウロ菌」を人工的に共生させた「コナラ」の苗木を国内の試験地に植栽。
去年11月にトリュフ(ホンセイヨウショウロ)の発生を確認した。
「ホンセイヨウショウロ菌」が樹木の根に完全に定着し、土壌の中で増殖して、トリュフを形成したものと考えられる、としている。
国内で初めての成功例ということだが、そもそも、なぜ、トリュフの人工栽培は難しいのか? また、人工栽培のトリュフはどのような香りなのか? そして、実際に販売できるようになるのは、いつ頃なのか?
今回の研究の担当者、森林総合研究所の山中高史さんに話を聞いた。
トリュフの人工栽培が難しい理由
――トリュフを人工栽培しようと思った理由は?
トリュフはイタリア、スペイン、フランスなどが有名な産地です。近年、我が国でも食文化の多様化を受けて、トリュフの香りを楽しむ機会が増えています。国内で流通するトリュフは全てが海外からの輸入によるものです。
産地によって、その価格は異なりますが、ヨーロッパ産はキログラム当たり約8万円(2020年度財務省貿易統計)で輸入されており、きのこの中で最も高額に取引されています。
日本でも、20種以上のトリュフが自生し、その中には食材として期待のできる種も存在しましたが、野生のトリュフは希少で、人工栽培の技術は確立されていませんでした。
また、森林総合研究所では、国内の林業の振興や中山間地域の活性化を目指した研究開発を行っています。
林業においては植栽後、木材を収穫するまで、最低数十年かかる中で、それまでの現金収入を確保するために、キノコ栽培が重要ではないかと思い、様々な種のキノコ栽培技術の開発に取り組んでいるところです。
こうした理由から、国産トリュフの栽培化を目指し、2015年度から森林総合研究所を中核機関とした研究プロジェクトを開始しました。
――トリュフの人工栽培は、なぜ難しい?
トリュフは、生きた樹木の根に共生して増殖する「菌根菌」と呼ばれる菌類に属しています。
これを踏まえ、理由の1つは、「菌根菌」の場合、菌と樹木の両方の成長を制御する必要がある点です。
もう1つの理由は、様々な微生物が存在する土壌の中で、特定の「菌根菌」のみを優先して生育させるのが、難しい点かと思います。
腐生菌(シイタケ、エノキタケ、ナメコなど、木を腐らせて生育する種類)の場合、菌床栽培では、一旦、全て滅菌して、競合する微生物が存在しない中で育てるので、その種を増殖させることは簡単です。
原木栽培でも、用いる原木の中には、切って乾かした上で菌を接種するので、この場合も競合する菌は少ないです。
一方で、菌と樹木の両方の成長を制御する必要がある「菌根菌」に属するトリュフは、人工栽培が難しいということになります。
「正直、想定外のことでした」
――今回の人工栽培、どのように行った?
根にトリュフ菌を共生させた、コナラの苗木を野外の試験地に植えて、栽培しました。
トリュフは菌根菌と呼ばれる菌類に属しており、人工的にトリュフを発生させるには、樹木との共生関係を明らかにして、それを再現することが重要です。
海外では樹木の根にトリュフ菌を共生させた苗木を植栽することで、トリュフの栽培が行われてきています。
そこで、研究グループでは、国内のトリュフの自然発生地で調査を進めて、トリュフの生育に適した樹木の種類や土壌の環境を解明し、それらの条件を再現して、国産のトリュフを発生させることを目指しました。
食材として有望な国産の白トリュフである「ホンセイヨウショウロ」を共生させた「コナラ」の苗木を、国内各地の4つの試験地に植えて、栽培管理を行いました。
その結果、茨城県内の試験地、および、京都府内の試験地で、去年11月に、それぞれ8個および14個のトリュフの発生を確認しました。
――今回の人工栽培で「コナラ」の苗木を使った理由は?
私は元々、「樹木と菌根菌の共生関係」の研究を行っており、その際の研究材料として、コナラが適していました。
トリュフは様々な種に共生しますが、コナラが研究材料として適していたことが理由の1つです。
――トリュフと樹木を共生させる。これはどういうこと?
トリュフは樹木の根の表面を覆って、「菌根」という構造物を作ります。その菌根を介して、トリュフは樹木が生産した光合成の産物を栄養源として得て、生育します。
一方で、菌根菌は土壌の中を拡がって、樹木の成長に必要な無機養分を効率的に獲得して、樹木に供給します。
つまり、菌根菌が樹木の根に「菌根」を作ることは、お互いの生育に有益なものであり、それを共生するとしています。
この樹木の根にトリュフ菌が菌根を作って存在している状態にさせることを、トリュフを共生させるということです。
――収穫できる大きさになるまでには、何年ぐらいかかる?
最初に植栽試験をした茨城県では5年1カ月、京都府の植栽試験(2019年4月)では3年7カ月かかりました。
――人工栽培のトリュフを初めて確認したとき、どのようなことを感じた?
私は直接、現場で見たわけではなく、現場で調査している研究者から電話で話を聞きました。
正直、想定外のことでしたので、驚き、うれしく感じましたが、すぐに研究が次の段階に入ったことを自覚しました。
香りは「ガーリック臭」
――収穫したトリュフの数、大きさ、重さは?
2か所で、合計22個です。
最大のものは、直径約9センチで重さは約60グラムのものが1個。その他に、大きさ7センチ程度で重さ40グラム程度のものが3個ありました。
――人工栽培のトリュフ。輸入ものと比べて、味や香りに違いはある?
トリュフは香りを楽しむものです。
香りの印象は、海外産と同様に芳醇な香りがします。具体的に言うならば、「ガーリック臭」とも言えます。
「実用化には10年程度かかる」
――人工栽培のトリュフを販売できるようになるのは、いつ頃になりそう?
実用化までには、取り組むべき課題がまだあり、具体的にはいつ頃とは言えないのですが、強いて言えば、10年程度はかかると思います。
価格は検討中ですが、海外産よりも安く提供できればと考えています。
――販売できるようになるためには、どのようなことが必要?
今回、4か所のうち2か所のみで発生していまして、それを着実に発生させることが必要です。
――この技術はマツタケなど他の人工栽培にも応用できる?
マツタケはマツに共生する菌根菌ですので、マツタケの栽培化に向けた研究開発には、今回のトリュフに関する知見を活用して、取り組むことになります。
人工栽培のトリュフ、ぜひ一度、味わってみたいが、販売できるようになるまでには10年程度かかるという。
まだ先の話だが、高級食材である海外産よりも、安価で販売されることを期待したい。
引用元
「トリュフ」の人工栽培に国内で初めて成功…海外産と香りは違う?研究者「正直、想定外のことでした」 (msn.com)
茨城と京都の森林総合研究所の2ケ所の試験地で穫れたようです。
再掲:マツタケはマツに共生する菌根菌ですので、マツタケの栽培化に向けた研究開発には、今回のトリュフに関する知見を活用して、取り組むことになります。
トリュフの人工栽培に国内で初めて成功 森林総合研究所
↑国内各地に20種類以上自生しているとされるトリュフのうち、広く分布していて比較的大きく味や香りが食用に向いていると考えられる黒トリュフの1種の「アジアクロセイヨウショウロ」と、白トリュフの1種の「ホンセイヨウショウロ」を選び、それぞれが育ちやすい土壌について調査しました。
転記:野村龍司