第42回 マツタケ人工栽培究極の会  令和4年6月18日の記録

大阪管区気象台は6月14日、近畿地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。平年より8日、昨年より2日遅いそうです。気象庁は中国、東海、北陸でも同日、梅雨入りしたとみられると発表しました。

第42回 マツタケ人工栽培究極の会  令和4年6月18日の参加者は、

大島敏久先生、小松洋三さん、近藤さん、関谷次郎先生、高瀬尚文先生、藤田利幸さん、藤田博美さん、森下加裴さん、吉田さん、野村龍司の10名でした。

吉田さんと大島先生とは、旧知の間柄で、

吉田さんと小松さんと藤田博美さんは府大邦楽部以来の付き合いだそうです。

作業内容は、標高440m付近の尾根の整備・・・ソヨゴ・馬酔木・ヒサカキの皆伐と、松枯れの立ち枯れ木の、伐採・玉切り・片付けにより、林床に陽が射すようにすることです。

松の枯損木を、伐る藤田利幸さん

遠路 須磨から参加されているゴーグル小松

以前から、林床に陽が射すように、

下草やソヨゴの萌芽(ホウガ)を、搔き取っていましたが、

藤田林業社長によると、6月に萌芽の芽搔きをやるのが、

灌木を枯らすのに最も効果的だそうです。

大島先生は「関谷先生は、熱心だなあ」と感心されていますが、

独りでも山に入って、下草刈りをしたり、地搔きをしたりしている 

大島先生の作業量が最も多いと思います。

大島先生は学者らしく、いつも代謝物質(酵素)や代謝サイクルを念頭に

研究に取り組んでおられます。

論文は、当然にマテリアルバランス(物質収支)の解明がメインです。

「マツタケの真理が解明できたら、もういつ何時死んでもええなあ」

というのは、大島先生の独白でした。

論語に云う「朝(あした)に道を聞かば夕(ゆうべ)に死すとも可なり」

という求法精神(ぐほうせいしん)には、本当に頭が下がります。

大島先生と関谷先生は共に

「日本農芸化学会」のフェロー(限定100人)でいらっしゃいます。

恐らく「農芸化学」というのは、日本独特の学問分野だと思います。

初代農芸化学会会長は、オリザニンやvitaminB1の発見者:鈴木梅太郎博士

農芸化学の中でも、発酵醸造学では、坂口謹一郎博士、栃倉辰六郎博士、

山田秀明博士たち、錚々たるフェローが、名を連ねています。

さて、「マツタケ人工栽培究極の会」も、2017年7月の第1回において、

「マツタケ人工栽培」という目標を宣言して、

当初「5年計画」を掲げておりました。

それから、丸5年経った2022年6月現在「マツタケ人工栽培究極の会」として、

令和4年度から、林野庁の活動助成金(里山復活整備事業予算)を得るに至りましたが、

5年前と比べて、マツタケの真理について、何か新しい知見が得られたでしょうか?

これは、全員5歳加齢したという現実とともに、会員各人が自問する命題です。

 

以下、野村の論考

マツタケは、担子菌であり、菌根菌です。

つまり、【動物や種子植物のように、有性生殖した単位細胞:から、

1➡2➡4➡8➡16➡32➡64➡128➡256・・・と、細胞分裂で増殖する】

というような、先入観をまず捨て去るところから、

マツタケ菌の生態を捉える必要があります。

即ち、

【マツタケの胞子が、風(空気)を媒体にして

松花粉♂が松子房♀に着床して種子ができるように、

有性生殖した胞子の2倍体が、地面に落ちて雨水に伴って、

マツの根の先端に着床する】というようなファンタジー;

【種子植物をベースとした(常識的な)発想】を捨てないと、

真理には到達できないと、僕は考えています。

インフルエンザウイルスは、咳やクシャミで飛ばされた飛沫が、

蒸発して微細化して、空中を漂い、喉粘膜や、目の粘膜に着床します。

そのウィルスが、増殖して、「10の6乗個/グラム」のオーダーを超えたら、

サイトカインストームが起こる。

ウィルスは、生物ではありませんが、

菌は一般にウィルスに近いふるまいをする

(ウィルスが菌のようにふるまう)ので

『マツタケ菌は、動物や種子植物よりも寧ろ、

ウィルスに近いふるまいをするのではないか?!』

というのが僕の予想ですが、その予想の通りだとすれば、

ウィルスが喉粘膜に着床するが如く、

マツタケ菌が、松の細根に着床し、ネットワークを張るまでに、

どのような感染経路を辿るのかを、想像することです。

つまり、マツの「喉粘膜」に相当する、脆弱/感染し易い(vulnerable)なところ、

僕はシロネ(落葉樹の根が休眠中の冬に伸びるマツの根)が、

脆弱(vulnerable)だと思います。

↑シロネ

もちろん、茶色の直径8~12mmの松の根の、環状除皮した根の形成層付近も、

脆弱(vulnerable)だと思います。

↑茶色の直径8~12mmの松の根の、環状除皮した根の形成層付近に

単離培養したマツタケ菌糸を巻き付けるやり方で、

50%の確率で菌根ができる(但し、シロはできない)という実験は既に、

再現されている公知の知見です。

しかし、最も脆弱(vulnerable)で、

タイムリーにマツタケの胞子と出会い易いのは、

松ボックリから剥がれて落ちる瞬間の、マツの実の胚芽だと思います。

つまり、これから将に、根と芽を同時に伸ばそうとするマツの実の胚芽が、

松ボックリに、接着していて、剥がれたばかりの

粘着物質部分(テープの糊面)=胚芽付近は、

マツボックリから剥がれるのが、

10月中旬~11月初ごろ

マツタケ子実体が開いて、何兆個ものマツタケ胞子が飛ぶのも

10月10日~11月初ごろ

マツの実胚芽の糊しろ部分に、マツタケ胞子をcatch着床させて、

50ppm酪酸2価鉄とともに、マサ土で発芽させると、

マツタケ胞子は、マツの実の根と芽の出芽するあたりにじっと潜んで冬を過ごし、

低温と胚芽の(マツタケ菌以外に対する)抗菌物質に護られ

4月初めごろに、発芽したマツは、

マツタケ感染苗になっているのではないか///

ここで、脆弱(vulnerable)というのは、

感染し易く、菌が着床し易いという意味です。

マツタケと同じ担子菌で、腐生菌のシイタケの場合

子実体ができるのは、シイタケ菌がホダ木に2年ほどかけて充満し、

トナリに打ち込まれたコマ菌とホダ木の中で出会い、

シイタケがセルロースを同化するための未消化セルロースという

フロンティアが無くなってきたとき、シイタケ菌床が成熟して、

そこに雨が降る(ホダ木を水に浸ける)と、

シイタケ子実体が一斉に出てくる。

➡子実体はサイトカインストーム状態だ!

 

菌根菌のマツタケ菌の場合は、

感染苗の菌根のハルティヒネットが充分に張り巡らされ、

細根の表面の、ハルティヒネットワークが、

細根の延びるスピードが鈍化するマツの木の15年生あたりから、

フロンティアの拡大速度の鈍化と

菌根の充満を感じ取り、

(子実体ができるためのトリガー物質が産生されるのではなく、

菌根ネットワークの過密状態が原因で)

菌根に子実体ができるシロの出現///

という仮説を立てます。

今年の10月は、成熟した松ボックリを集めて、松の実を集め、

↑ 今海さん提供の丹波マツタケ(ヒラキ)

マツタケの「ややヒラキ」を購入し、ゴム手袋をしてマスクして、

(納豆を頻回に食べている僕は、強力なバチルスを身に纏っている)

松の実の胚芽の粘着物質に、マツタケの胞子を振りかけて、

↑ 太田明博士の発見した、マツタケ菌親和剤:50ppm酪酸

50ppm酪酸で湿度を与えながら、貧栄養でPH5.5程度のマサ土に

種蒔きをして、春まで発芽を待ちます。

ふつう、マツタケ菌胞子は、子実体のカサから離れたら、

48時間ほどで、死んでしまいますが、

きっと、マツの実胚芽に着床したら、

低温と胚芽の(マツタケ菌以外に対する)抗菌物質に護られ、

その揺籃で、春に根が伸びる際にマツの根から分泌される大好物の物質を

一意専心、ひたぶるに、夢心地で、待ち続けるのです。

きっと、生きたシロネにも、マツタケ菌の大好物が分泌されているハズです。

透明なアクリル板に挟んで、根の成長を観察するのも良し

光が根に当たらないように、パラメーターをいくつか設定した

対照実験も必要です。

 

マツの1~2年生苗の根についた泥を水で洗い流し、50ppm酪酸に浸漬させた根に

マツタケ菌の胞子をかけて、さらに清浄なマサ土に埋め戻して、

冬、落葉樹がじっとしている時期に、光合成させる(シロネを延ばす)。

鉢植えにするにしても、30℃を超えないように、

感染苗がシロに変化する2038年秋まで、

コンタミを丁寧に排除しながら、気長に観察しましょう。

人生は短くとも、 真理は永遠なのです。

 

 

最後に、以前の論考などを共有します。

 

酸性雨とマツタケとマツ材線虫病

「マツタケ「子実体」から、シロが再生できるのか?」

マツタケ人工栽培問題 そこに解は あるんか?

研究は have a Vision とWork hard と、どちらが欠けてもダメです。

 

野村龍司

 

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